落合監督の退任と中日新聞社の業績

ドラゴンズはヤクルトにまさかの四連勝でマジック2。退任が決まっている落合監督が優勝で有終の美を飾る可能性が極めて高くなった。私は8年前の落合監督就任時にこんな記事を書いていたくらいなのでいろいろ感慨深い。

中日球団は前回のヤクルトとの四連戦の初戦前という重要な時期に退任を発表し、功労者に退任後のポストを用意することもしなかった。そこからは中日球団の「戦績に関わらず落合を辞めさせる」という強い意志が感じられる。なぜ8年で3度チームを優勝に導き、いまその栄冠をまた一つ増やそうとしている監督が退任なのか。

その理由についてはすでにさまざまな要因が報じられている。共通して書かれているのは「チームは好成績でも営業面が不調である」ことだが、これには強い違和感をおぼえる。観客動員の増減はチームが勝ち続けている以上、監督が責任を負う問題ではなく、営業部門の責任者や組織のトップが責められるべき問題だからである。

要するに落合監督は強いチームをつくったが、営業がそれをきちんと売り込めていない、ということだ。しかも名古屋ドームのチケットの高さや飲食店のプアーさ、飲食物の持ち込み制限、グッズのクオリティの低さなど、営業上の問題点に関しては従来からネットで多々挙げられているが、改善がなされていない。

なぜすぐにでも着手できそうな営業上の改善をせず、観客動員減の責任を直接負う立場にない落合監督が退任になったのかを考えたとき、中日新聞の昨今の業績と新聞社傘下という球団の特性が作用しているように見える。中日新聞と読売新聞、そしてブロック紙という括りで一緒にされる北海道新聞の過去三年間の業績を比較してみよう(手作業なので間違いがあったらご指摘下さい)。

中日新聞    売上高    前期比    営業利益    売上高営業利益率
09.3      154,658              -2,851         ―
10.3      146,719        -5%      3,557         2.42%
11.3      144,092           -2%        473       0.33%
                
読売新聞  売上高   前期比  営業利益  売上高営業利益率
09.3      455,349               6,135        1.35%
10.3      435,180      -4%      9,268        2.13%
11.3      423,086       -3%     18,016          4.26%
                
北海道新聞  売上高 前期比  営業利益  売上高営業利益率
09.3        59,793                             241       0.40%
10.3        56,824        -5%           1,390         2.45%
11.3        55,135        -3%            1,845        3.35%
                
出典:会社四季報 未上場会社版2011年下期            
    金額:百万円

こうしてみるとリーマンショックの影響があった2009年は三社とも業績を落とし(読売は同年純利益がマイナスになっている)、その後売上高は減らしつつも営業利益は回復の傾向にあるが、中日新聞だけ2011年3月期に再び業績が落ち込み赤字スレスレの低空飛行になっている。3.11の影響を受ける2012年3月期はさらに厳しい状況になると予想される。このような状況では全社的にコストダウンが課題となり、球団もその例外ではないのだろう。

しかし、せっかく強いチームという資産があるのだから、たとえばホークスタウンのような展開をおこなって集客力の向上と収益の多様化をはかる道もある。単なる縮小均衡よりそのほうがファンも喜ぶ。だが、母体である中日新聞にとって球団を持つ最大の目的は新聞の拡販であり、そのような方向にはなかなか目が向かないのだろう。ファンはチームを応援しているのに、球団の所有者は新聞を売るのが眼目という齟齬がそこにはある。

かくして、勝ち続けてチームの人件費が高くなったうえ、ろくに記者に受け答えせず新聞の紙面作りにも貢献しない落合監督は切るべし、という判断にいたったのではないかと想像する。私にはビジョンの欠けた、地方企業っぽい視野の狭い判断にしか思えないけれど。

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