過労自殺や過労うつ病がクローズアップされるようになりましたが、そもそもどのくらい働くと人は精神疾患にかかるのでしょうか。
労災認定された51件の自殺事案について、精神科医が長時間労働との関連性を分析した調査があります(※1)。この調査の主要な結果を以下に抜き出してみましょう。
(※1)「労災認定された自殺事案における長時間残業の調査」黒木宣夫 産業精神保健12(4) 2004
「全体の86%(44)に45時間以上の時間外労働が認められ、100時間以上の時間外労働は53%(27)もみられた」
「発病から死亡までの機関は、3カ月以内に71%(36)が自死に至っていた。そのうちの53%(19)が100時間以上の時間外労働をしていた。出来事から6カ月以内に自死に至っていた者は63%(32名)であった。その中で100時間以上の時間外労働に従事していた労働者は59%(19)であった。」
「ノルマの未達成が関与して業務上と認定された事例は61%(31)をも占めていた」
さらに事例を99時間以内の残業と100時間以上の残業に分類し分析したところ、「ノルマが達成できずに必然的に極度の長時間残業に携わらざるを得なくなった事例」が、前者は54%(13)、後者は70%(19)でした。また、前者は6カ月以内に71%(17)が、後者は96%(26)が発病し、発病までの期間は後者の方が短かったそうです。
長時間残業をすれば必ずうつ病になるわけではありませんが、これらの結果を見るとノルマの未達成→長時間労働→うつ病発症→自死という構図があることがわかります。
では、長時間労働はなぜうつ病の発症に関わるのでしょうか。それは睡眠不足に直結するからで、他の論文を引用して次のように説明されています。
「内山※2も『4時間睡眠を1週間にわたり続けると健常者においてもコルチゾール分泌過剰状態がもたらされるという実験結果もある。これらを総合すると、4~5時間睡眠が1週間以上続き、かつ自覚的な睡眠不足感が明らかな場合は精神疾患症、とくにうつ病発症の準備状態が形成されると考えることが可能と思われる』と報告している」
(※2 内山 真 睡眠と精神障害の関係に関して 平成15年度災害科学に関する研究:5-28.)
これを踏まえ、黒木論文では「精神疾患発症の予防は、まさに4~5時間睡眠を境に検討すべき」とし、「時間外労働月100時間以上の労働に従事した労働者に精神医学的配慮が必要と考えることが妥当であろう」と結論づけられています。
(この項続く、かも……)
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はじめまして。先ほどツイッターでフォローしていただいたものです。
わたしの場合、過労とは違いますがパワハラでうつになりました。21歳のとき、大学研究室でのことで、「バカヤロウ死んじまえ」などの言葉を毎日浴びせられ(週6日)、およそ2ヶ月弱で学校に行けなくなりました。
こういう例で埋もれているのは結構あると思います。