有給休暇は制度として存在しても、実際にはあまり消化されていないと言われる。実際にどの程度取得されていて、取りにくいとしたら何がネックになっているのだろうか。
先月発表された「年次有給休暇の取得に関する調査」(労働政策研究・研修機構)によると、2009年度の初めの時点で権利として持っていた年次有給休暇の日数の平均値は24.6日で、一年間に実際に取得して休んだ日数の平均値は8.1日だった。実に権利の3分の1しか行使していない計算だ。
また、年休取得率の平均値は51.6%。年休取得率が上記の数字と一致しないのは、年休取得率=年休取得日数/新規付与日数(前年度からの繰り越し付与日数を含まない)ためである。こちらの数字でも取得は半分程度ということで、有給制度は積極的に活用されていないといえる。
取り残す理由の上位は次のようになっている。
- 「病気や急な用事のために残しておく必要があるから」64.6%
- 「休むと職場の他の人に迷惑になるから」60.2%
- 「仕事量が多すぎて休んでいる余裕がないから」52.7%
- 「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから」46.9%
- 「職場の周囲の人が取らないので年休が取りにくいから」42.2%
最上位以外は、いずれも勤め先の要因によって生じている理由が上位にきている。周囲に配慮しすぎではないか、という印象を私は受けた。
最上位の病休のためにとっておくという理由も、年休本来の趣旨にはそぐわない。そもそも年休とは働く人の心身の疲労回復や健康の維持・増進などを目的として労働基準法で設けられている制度だからである。
年次有給休暇にも、制度と実態の大きな乖離が見られるわけだ。
なお、この調査では3年前と比べた年休の取りやすさの変化についても質問していて、「取りやすくなった」は18.1%、「取りにくくなった」は20.1%で拮抗している。「取りやすくなった」人にその理由を尋ねた結果の上位は次の通り。
- 「年休が取りやすい職場の雰囲気になったから」42.8%
- 「自分で積極的に取得するよう心がけた」41.5%
- 「上司などからの年休取得への積極的な働きかけ」30.6%
「年休が取りやすい職場の雰囲気」がいま一つどういうことかわかりにくいが、想像するに年休を申請しても上司や周囲に嫌な顔をされずにすむ、ということだろうか。
法で定められた働く人間の権利を行使すると嫌がられる、というのは奇妙な話である。「休むのは罪」という意識が人々の間に潜んでいるのだろうか。
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