ビジネスパーソンが文章を“書く前に”チェックしておくべき5W1H(2H)

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 長年、ビジネス領域でライターの仕事をやっているためか、ビジネスパーソンの方から「どうすれば仕事で必要な文章をうまく書けるようになるか?」といった相談をされることがあります。

 以前はお話を聞いて「こうするといいんじゃないですか」と個別的にアドバイスしてきたのですが、最近は「まず5W1H(2H)を考えてみたらどうですか」とお話することが増えました。理由は後述します。

 5W1Hとはもともと「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という6つの要素をまとめた新聞記事を書く際の原則で、「いくら(How much)」を加えて5W2Hということもあります。

 ただし、ここではその意味ではなく「文章を“書く前に”整理しておくべきポイント」のことを指します。まあ、私がそうまとめているだけなんですが。



1 Why? (なぜ、その文章を書くのか?)

 仕事のなかで文章を書くには、何か目的があるはずです。企画書であれば「自分の立てた企画を通す」ですし、報告書なら「上司に現場の状況を正確に認識させる」等々。

 直接の目的だけでなく間接的、あるいは上位の目的が存在することもあるでしょう。直接的には「自分の企画を通す」ことが目的でも、さらにその先には「企画を通して自分のやりたかった仕事を実現する」「企画を通すことで人事評価を上げる」といった目的があるかもしれません。

「Why?」を考えるのは、文章を書くことのゴールを明確にするためです。ビジネス活動の範疇において「良い文章」とは何かといえば、直接的な目的を達成したり、より上位の目的の達成に貢献したりする文章です。

 目的がはっきりしなければ、その文章の良し悪しの評価もできません。必ずしも文章の巧拙が良し悪しの基準ではないのです、ビジネス文章の場合。

「Why?」をはっきりさせることで、目指すべき文章の品質や執筆にどのくらい力を入れるべきかもわかってきます。単なる情報共有を目的とするメールに時間をかけるのは意味がありませんし、相手に強く印象付けたいメールなら時間をたっぷりかける価値はある、といった判断ができるようになるわけです。

2 Who? (誰に対して、その文章を書くのか?)

 公表する文章を書くときは、その対象となる相手がいるはずです。対象となる相手によって、使用する言葉の選択や文章のスタイル、ボリュームなどの要素が変わってきます。

 人によって持っている知識も理解力も、反応するポイントも異なるので、文章は想定する読者に合わせて作成しなければいけません。要は同じ内容を伝えるのでも子ども相手と大人では使う言葉の選択や話の展開も違ってくる、ということです。

 ところが、実際には「誰に向けて書くのか」を踏まえていない文章がけっこう目につきます。それでは文章を書く目的が達成できません。

3 What? (何を書くのか?) 

 文章を書くとき、あらかじめ指定されたテーマがないときは「Why?」と「Who?」を検討したうえで、何について書くのかを考えます。テーマが決められている場合でも同様に、与えられたテーマのどんな部分に焦点を当てるのか検討する必要があります。

 ある会社のある部署で「顧客にヒアリングしてレポートを書け」という課題が出されたとき、ほとんどの社員があらかじめ上司が用意した質問項目を顧客に尋ねた結果だけをレポートに書きました。

 ところが一人の社員だけはヒアリングの意図が顧客ニーズの把握であることを踏まえ、単に質問項目に対する顧客の答えをまとめるだけでなく、頼み込んで商品の使用現場まで見学させてもらい、現場を観察した内容と分析、そこから得られる示唆を加えたレポートを書きました。上司からの評価が高く、実際に役立ったのはもちろんこの社員のレポートでした。

4 When? (いつ書くのか? いつ発表するのか?)

「When?」で考えることは二つあります。一つはいつ文章を書くのかというスケジュールのことと、もう一つは書いた文章をいつ発表するのかというタイミングのことです。

 文章を書く作業には時間がかかり、通常は〆切やデッドラインがあります。したがって作業時間を見積もり、定められた〆切までに書き上げられるよう自分のスケジュールに組み入れる必要があります。執筆作業は頭脳労働で、集中力次第で書くスピードや内容のクオリティは段違いになりますから、できれば自分の頭がよく働く時間帯を確保するべきです。

 〆切に遅れるとその後の工程に影響が出てしまい、周囲に迷惑をかけてしまいます。ちゃんと〆切を守るには、あらかじめ書く時間を確保しておくことです。

 また、文章は内容もさることながら、いつ発表するかというタイミングも重要です。よく芸能人のスキャンダル記事がその人が出演する大きなイベントに合わせて掲載されるのは、そのわかりやすい例です。AKB48総選挙後に書かれた指原さんとか。逆にいくら内容が充実した記事でも、発表するタイミングが悪ければ読んでもらえません。

 発表の時期を自分で決められる場合は最適なタイミングを狙うことが重要ですし、いつ発表されるか決まっている場合はその時期を意識して、少なくとも「季節外れの文章」にならないようにする必要があります。

5 Where? (どこで書くのか? どこに書くのか?)

「Where?」で考えることも二つあります。一つは執筆場所の問題。もう一つは文章が掲載される媒体の問題です。

 文章を書くには集中できる環境が必要です。いつ書くかとともに、どこで書くかも事前に考えておいたほうがよいでしょう。集中できる環境を常にキープできている人はよいですが、オフィスはいろいろ邪魔や雑音が入ってくることが多いので。

 そして媒体の問題は、「Who?」の話ともつながります。部内の人だけが読むレポートと社員全員が読む可能性がある社内報、社外の人にも読まれる広報媒体では、同じテーマでも書き方は異なるし、出してよい情報の範囲も違ってきます。

6 How? (どう書くか?)

 書き慣れている人はともかく、文章をどんな文体や構成で仕上げるのかも書く前にある程度考えておかないと、作業がはかどらなかったり内容がぐちゃぐちゃになったりという事態に陥りがちです。

 とくに文体を「だ・である」、「です・ます」、「でございます・であります」とあるなかからどれを使うのかと、読んでもらうためにどんな論理展開で文章を構成するのかは最低限考えておいたほうがよいです。

7 How much? (コストはいくらか?)

 文章を書くにもお金、時間、労力と広義のコストがかかります。慣れないうちは時間と労力がけっこうかかるでしょう。その費用もきちんと見積もって、かけた費用に対する効果がどの程度見込めるのかを意識しておくべきです。

 
 以上、やたら長くなってしまいましたが、文章を書く前にこれらのポイントを押さえておくと、その後の作業をスムーズに進めることができます。

 で、最初に戻って文章の書き方について相談されたとき、なんでこの5W1H(2H)を持ち出しているかというと、実際に頭を整理するのに役立つのもありますが、「今さら頑張って自分で書かなくてもいいんじゃね?」と思う人がけっこういるからです。別に営業トークじゃないですよ。

 村上春樹のレベルを目指すならともかく、ある程度の水準に文章力を上げることは誰でもできます。ただ、それには訓練が必要で、時間と労力がかかります。もちろん文章力があれば仕事上、強い武器になるでしょうが広報のような仕事や時間に余裕がある人でもない限り、その時間と労力は本業に向けた方がもっとよい成果につながるのではないかと。

 つまり「How much?」をよく考えてみては、ということです。とくに偉い人は。

「どうしても自分で文章を書く必要に迫られている」という人は、(1)代替手段を考える(電話で済ます、会議や口頭で伝える)、(2)他人に任せる(外注する、部下や同僚にやってもらう)、(3)定期的に発生する書き物はテンプレート化して負担を軽減する、といった手段をとればよいのです。

 将来は著作家になりたいとか好きで書くならノープロブレムですが、本職でもないのに文章を書くことに引っかかって思い悩んだり、コンプレックスを抱いたりするのは避けて欲しいなと思います。

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)
山田 ズーニー
PHP研究所
2001-11



 

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