(画像出典:中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書)
ユニクロの中国下請け工場が過酷な労働環境にあることを香港拠点のNGO団体が調査・告発し、同社もその事実を概ね認めました。
ヤフーニュース ユニクロ: 潜入調査で明らかになった中国・下請け工場の過酷な労働環境
中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書(PDF)
告発したNGO団体SACOMが発表した報告書によると、指摘されている違法行為は次の4点です。
1.低基本給と長時間労働
2.危険な労働環境
3.厳しく懲罰的な経営方法
4.代表を持たない労働者の存在
一日平均の労働時間は11時間、一か月の休みは1~2日で、月平均の時間外労働時間は134時間。日本の時間外労働の危険ラインとされるのが80時間であることを考えると、相当な過重労働であり、中国の労働法にも違反しています。
労働環境も劣悪で、夏季の室内気温は約38℃に達するがエアコンはなく、「あまりの暑さに夏には失神するものもいる」。工場内はホコリや化学物質であふれているが、換気設備はまったく機能していません。排水が作業現場にあふれ、機械からの漏電で従業員が死亡する事故が昨年7月にあったそうです。
海外下請け工場の劣悪な労働環境や違法労働に関しては、過去にナイキやアップルが批判されています。ユニクロは事前にこうした事態を防ぐことはできなかったのか。
実はユニクロでは取引先工場に対する「労働環境モニタリング」や、新規取引を検討している工場に対し「事前モニタリング」を実施しているとCSR報告書で発表しています。NGOの報告書には明らかに劣悪な労働環境の写真が掲載されており、今回の告発はユニクロの労働環境モニタリングが機能していなかったことの証明となります。
ナイキのケースでは当初、同社が批判に反論し不買運動に発展した後、方針を転換しNGOと協業して問題解決に取り組むようになりました。
ナイキは、その後、態度を改め、企業責任担当の副社長を外部から招聘し、ナイキに寄せられる企業責任に関する様々な社会的要請にマネジメントレベルで一元的に意思決定を行う体制を構築しています。また、GAP、世界銀行などとともにNGOを設立し、途上国の工場の労働環境を調査し、改善策を策定しています。
(水上武彦のCSV/シェアード・バリュー経営論 企業が変わるとNGOも変わる。「対立」から「協働」へ)
このケースはグローバル大企業は自社内のみならず、サプライチェーン全般に責任を負わなければならないという潮流を改めて示すものです。実際、ユニクロはこの潮流を認識して労働環境モニタリングを実施していたわけですが、それが機能していなかった。
この事実は、自社内で過重労働問題が発生した同社の組織体質と無縁ではないように思います。ユニクロの対応が、これからナイキのような方向に向かえるのかが今後の注目ポイントですが、批判本の著者にスラップ訴訟を起こした同社にそれができるかどうか。
また、過重労働の問題を自社内に抱える企業にとっては、それが取引を切られるリスクになり得ることを指し示す案件でもあります。
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