職場の大問題として認識されるようになって久しいパワーハラスメント。パワハラの起こりやすい職場にはいったいどのような特徴があるのでしょうか。厚労省
の委託事業として実施された「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」では、この点について調査分析を行っています。調査者は東京海上リスクコ
ンサルティング。
「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の報告書がまとまりました。(厚生労働省)
同調査では企業に対して郵送調査、従業員に対してインターネット調査を実施し、サンプル数は企業が4580社(回収率27.3%)、従業員が9000名。
企業調査においてパワーハラスメントに関する相談がある職場に共通する特徴としてあがった項目は次のようになっています。
「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」51.1%
「正社員や正社員以外などさまざまな立場の従業員が一緒に働いている職場」21.9%
「残業が多い/休みが取り難い」19.9%
「失敗が許されない/失敗の許容度が低い」19.8%
一方、従業員調査では現在の職場でパワーハラスメントを受けたり見たりした経験者と未経験者の質問に対する回答を比較し、パワハラが発生している職場の特
徴を探っています。つまりパワハラ経験者の選択比率が高く、かつ未経験者のギャップが大きい質問項目はパワハラが発生しやすい職場の特徴を表しているとい
うわけです。その項目は次の通り。
「残業が多い/休みが取り難い」(経験者40.5%、未経験者22.3%、差17.9ポイント)
「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」(経験者29.7%、未経験者11.8%、差17.4ポイント)
「上司と部下のコミュニケーションが少ない」(経験者35.2%、未経験者17.8%、差17.4ポイント)
企業調査と従業員調査を比較すると、ほぼ同じ項目が上位になっています。それらに基づくとパワハラが発生しやすい職場のイメージは、残業が多く休みが取り
難く、失敗の許容度が低く、上司と部下のコミュニケーションが少ない職場。言い換えると業務が過大か非効率で、ガバナンスが機能せず、マネジメントに余裕
がなく、上下の人間関係がよくない職場、というところでしょう。そう考えるとパワハラ問題はモンスター上司をどうするかといった話にとどまらず、広く経営
の問題であると思われます。
また、従業員調査の「悩み、不満、問題と感じたことを会社に伝えやすい」という質問に対し、「あまり当ては
まらない」「全く当てはまらない」と答えたパワハラ経験者、未経験者の比率を比べると64.0%対35.9%で、かなり大きな差があります。「悩み、不
満、問題と感じたことを上司に伝えやすい」という質問でも57.9%対31.9%と、やはり2倍近い差です。
ここからは従業員とのコ
ミュニケーション回路をどう築き、機能させるかがパワハラ予防で重要であることが示唆されています。パワハラ対策はどちらかというと売上や利益の獲得につ
ながらないディフェンス的な施策であり、それがあまり積極的に推進されない要因だったりしますが、コミュニケーション施策は職場の活性化ともつながる話で
あり、この辺を統合すると有効な施策を行いやすくなるのかもしれません。
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