Aクラスを維持する中日、巨人と下位に低迷する横浜のシンプルな違い

勝ち続けるチームにはどんな秘訣があるんでしょうね?

今年セ・リーグ覇者となった中日ドラゴンズは9年連続Aクラス入りという安定した強さを誇っていますが、「この20年間で2位が10回」という「勝ち切れない」万年二位球団という側面も持っています。

『中日ドラゴンズ論』(ベスト新書)はそんなドラゴンズの強さの特徴を、かつて中日ドラゴンズのエースであり、球界を代表する左腕投手であった今中慎二氏が分析した本です。現役時はチームの中心に君臨し、その後ずっとチームを取材し続けてきた著者ならではの視点や分析があり、この手の本にありがちな裏話の羅列にとどまらない内容になっています。

で、本書の最後に著者と川相昌弘氏と中村武志氏の鼎談が掲載されていて、これがけっこう味わい深い内容でした。巨人から中日に移籍した川相氏と、中日、横浜、楽天と渡り歩いた中村氏の話はおのずと中日、巨人、横浜の比較となっていきます。とくに中村氏は横浜というチームに抱いていた不満がところどころ顔を出すといいますか。

中村 またヨコハマの話になって申し訳ないんですけど、負けても「行ってきます!」と堂々とホテルの正面から出る選手が多かった。選手は責任感を持ってプレーしてはいるんだろうけど、そのあたりをチームとして自重していかないと勝つ集団にはならないだろうな、とは感じました。

こんな感じ(笑)。確かに、勝負にかける真剣さがないとはいいませんが、他の上位チームに比べると劣るのは、素人がプレーを見てても伝わってきましたね。

さらに中村氏は98年に阪神から久慈選手と関川選手が中日にトレードで来たとき、二人がチームのあり方の違いに「ありえないです!」と驚いていたエピソードを紹介します。

中村 ふたりがいたころの阪神って「暗黒時代」と言われていたから、ある意味「負けても仕方がない」と思いながら試合をしていた部分があったと思う。でも、中日は「勝って当たり前」という考えが普通にあって、連敗といってもせいぜい3,4連敗でしょ。相当、戸惑っていたからね、最初。5月あたりに巨人と首位を争っていたときなんか、「こんな世界、初めてです」ってずっと緊張していた。今ではふたりの気持ちはすごく分かる。横浜が昔の阪神みたいだったから。物足りないんですよね。刺激がないというか。「こいつらは何を目標に戦っているんだ」みたいな。

この発言に川相氏も同意します。

川相 強いチームと弱いチームの違いはそういうところだろうね。中日や巨人はどんな戦力、チーム状態でも「優勝」の二文字しか頭にないから常に緊張感を持って戦える。

きわめてシンプルな結論ですが結局、優勝という目標を持っているかどうかが、戦いにおける集中力や勝利への執念を生むようです。チームによっては戦力が足りないから優勝という目標を持てない、という面もあるのかもしれません。しかし、落合監督が2004年の就任時、「補強しないで優勝する」と宣言して選手を鼓舞し、評論家に冷笑を浴びせられながらも優勝したのは記憶に新しいところです。

勝って当たり前、優勝して当然という意識をどうやって組織に根づかせるか。そこに強いチームづくりの第一歩があるのだと改めて認識させられた次第です。

中日ドラゴンズ論 (ベスト新書)中日ドラゴンズ論 (ベスト新書)
著者:今中 慎二
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