『ワーク・シフト』が提示する未来のシナリオ
2025年に私たちの働きかたはどうなっているでしょうか。どんな時間や場所でどんな人たちと仕事をして、どんなスキルや資質が高く評価され、どんな報酬を得てどんな暮らしをしているのか――。
『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著 プレジデント社)では未来の働き方に影響を与える5つの要因に基づいて、興味深い未来シナリオを提示しています。
まず、著者が指摘する未来に影響を与える要因は次の5つです。
(1) テクノロジーの変化
(2) グローバル化の進展
(3) 人口構成の変化と長寿化
(4) 社会の変化
(5) エネルギー・環境問題の深刻化
たとえばテクノロジーが飛躍的に発達することにより、世界の50億人がインターネットで結ばれ、地球上のいたるところでクラウドが利用できるようになる一方、テクノロジーが人間の労働者に取って代わったりもする、というように、それぞれの要因がさまざまな新しい現象をもたらしていくわけです。
「漠然と迎える未来」と「主体的に築く未来」
それらの結果を組み合わせることにより未来の働き方のシナリオを描き出していくのですが、本書では「ロンドンのジル」「ムンバイのローハン」というように世界の都市で暮らす架空の人物を複数登場させ、2025年にそれぞれが日常的にどのような職業生活を行っているのかをリアルに記述するという方法を用いていて、これがなかなか面白いです。
そこで提示されるシナリオは大きく二つの方向性に分かれています。いつも時間に追われ、人とのつながりが断ち切られ、新しい貧困層が生まれる「漫然と迎える未来」と、みんなの力で大きな仕事をやり遂げ、共感とバランスのある人生を送り、創造的な人生を切り開く「主体的に築く未来」。そして主体的に築く未来を実現するには、三つの面で従来の常識をシフトさせよと説いています。
ちなみに、ここで使われている手法は「シナリオ・プランニング」と呼ばれ、複数の未来シナリオを想定することで、何が起こるかわからない混沌とした世界のなかでより適切な意思決定を行うというものです。要するに「確実な未来なんてわからない」という当たり前過ぎるほど当たり前の前提に立って、未来に影響を強く与える要因から起こり得る複数のストーリーを想定し、将来への準備と決断をしていこうというわけです。
(参考:シナリオ・プランニング)
「三つのシフト」の実践に必要なものは?
さて、『ワーク・シフト』が説く三つのシフトとは次の通りです。
第1のシフト:ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
第2のシフト:孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
第3のシフト:大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
これらの主張は確かにそうかもしれないな、と思う反面、実践するのはかなりしんどいだろうと思います。「連続スペシャリスト」とは専門技能の連続的習得者という意味ですが、何が価値を持つ専門技能になるのかを見出し、それを連続的に身に付けていくというのは相当ハードですし、プロジェクトに応じて適切な協力者を探すコストはけっこう高くつきます。
とはいえ、大量消費から「情熱を傾けられる経験」へというシフトはかなり魅力的ですし、少なくとも経済成長が頭打ちになる一方、すでに一定水準の物質的な豊かさが達成された先進国において明るい未来をつかもうとするのなら、これら三つのシフトに向かわざるを得ないのかもしれません。
もしそうだとするなら、しんどそうな三つのシフトを実践していくには、どうしていけばよいのか。そこではおそらく、個人の理念や哲学といったものの確立がより強く必要になるのではないでしょうか。己は何者であり、いかにして生きていくのか。そうした根本的な問いかけからドライブをかけていかないと、とてもやっていけないだろうと思うのです。
ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉
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はじめまして、こんにちは!
面白そうな本ですね!
ちょっと仕事をしながら考えさせられました。そのなかでもテクノロジーの発展での人々の今後の暮らしぶりとかは想像が追いつかない時代になっているのかな~と、わくわくもするし多少怖い感じもしますね。
日本ではSNSがまだまだ熱があるようで、私の読んでいる記事では企業レベルでのソーシャル・ネットワークについて書かれていました。
http://bit.ly/Z9YKJa
ほかにも面白い記事があるので、是非読んでみてください。