枯れた分野でイノベーションを起こす「本質追求型の思考法」

バルミューダGreenFan2+(グリーンファン2プラス)EGF-1200-WG (ホワイト×グレー)
バルミューダGreenFan2+(グリーンファン2プラス)EGF-1200-WG (ホワイト×グレー)

 この夏、雑誌「プレジデント」の企画で家電ベンチャー数社を取材しました。『MAKERS』で示されているように、モノづくりのハードルが劇的に下がっている事実は知識として知ってはいましたが、生み出されているモノのユニークさやムーブメントに関わっている人々の熱さには圧倒されるばかりでした。

 この記事が分割してネットにも転載されているので、よろしかったらご覧ください。

 とりわけ面白かったのは、枯れた商品カテゴリーでも革新的な製品が生み出されていることでした。もはや新規性なんか打ち出しようがないとみんなが思い込んでいた分野で、「なんじゃこりゃぁぁぁ!」とユーザーに衝撃を与えるモノがつくられていたのです。それも、開発時は個人や片手で足りる人数で。

 取材したなかでいうと、それはバルミューダの扇風機「GreenFan」と、ビーサイズのLEDデスクライト「STROKE」でした。


 GreenFanは自然のそよ風のような優しく柔らかい風を送り出し、それは一緒に体験した編集者が思わす「親にプレゼントしたい」と言い出したほどでした。STROKEは点灯するとふんわりと明るくなりはじめ、自然光に近い目に優しい光でデスクを照らします。それぞれ3万円を超える価格設定ですが、よく売れています。

 モノづくりのハードルが下がったとはいえ、革新的な製品をつくっているメーカーは限られています。では、バルミューダとビーサイズはなぜ革新的な製品アイデアを形にできたのか。

 バルミューダを創業した寺尾玄さんは高校を中退し放浪の旅に出た後、プロのミュージシャンを経て起業した人物である一方、ビーサイズの八木啓太さんは大学院卒で大手メーカー勤務を経て起業したという対照的な経歴ですが、考え方によく似たところがありました。

 それは「扇風機とは何か?」「その製品でどんな体験を提供するのか?」といった、ものごとの本質にさかのぼって思考している点です。
 

 人が扇風機を使うのは、涼しさが欲しいからだ。ここに革新のポイントがあると寺尾氏は考えた。従来の発想では、扇風機とは風を出す機械だが、良い扇風機とは涼しさを提供する機械だと。では、涼しい風とは。それは自然のそよ風である。扇風機は渦を巻いた風を送り出すが、自然の風は空気が大きな面で移動したものだ。では、それを扇風機で再現しよう。
 (出典:POL 社員50名!「いいモノは高くても売れる」バルミューダ3万円の扇風機で証明

「しかし重視しているのは良いハードウェアをつくることではなく、それを使うことでどんな体験を得られるかです。このライトも、デスクライトというハードウェアではなく、最高の光を提供するものです。プロダクトは体験から逆算して生まれるものだと私は思っています」
 (出典:POL 社員4名! Bsize「美しく、高性能」なデスクライトで数カ月待ちの大ヒット

 我々は「扇風機とはこういうもの」といった概念を持っていて、それに基づいて会話したり思考したりしています。普段はそれでよいのでしょうが、何か新しいものをつくるときはその枠組みから離れて、商品の本質的な存在意義にさかのぼって考えてみると、従来にはない革新的なアイデアが生まれてくる、かもしれない。

 付け加えると、革新的なアイデアが生み出せても、大企業では商品化するプロセスのなかで「儲からない」「リスクが大きい」などの理由で往々にして潰されてしまいがちです。その点で、革新的な製品をつくるには作り手の思いをストレートに形にしやすい個人や中小企業のほうが向いているのかもしれません。

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