【本】『金持ち父さん 貧乏父さん』のうさんくささ

またベストセラーについて。
2000年11月に初版が刊行されて以来、今なお売れ続けている『金持ち父さん 貧乏父さん』は、マルチの勧誘のダシに使われたり、実は「金持ち父さん」なんて実在しないとバラされたり、本から派生したおもしろエピソードがいろいろ興味深かったりしますが、それはさておき、ここでは書評など。

仕事柄、ビジネス系の売れ筋本はざっと目を通すのですが、なぜか本書を読むのは今回がはじめてでした。で、一読しての感想は、わりと重要なメッセージは含まれているものの、読み進めるほどに辟易とさせられて、最後のキャッシュフローゲームの宣伝で著者がこの本を出版した真意がわかった、という次第(笑)。そういえばmixiあたりで一頃、キャッシュフローゲームの宣伝がうんざりするくらい書き込まれていましたね。やはり、不動産よりそっちが本業なのかな?

お金のために働くな、お金を自分のために働かせろ、とか、職業とビジネスの違いを知って自分のビジネスを持て、なんて主張には確かに頷かせられるし、90年代後半のひどい金融危機で会社があてにならなくなった時代においてはタイムリーなメッセージだったと思います。

その一方で辟易とさせられたのは、著者の倫理観の欠如と陳腐な職業観です。例えば「自分に対する支払い」を先にして「他人に対する支払い」を後にせよと著者は言います。他人への支払いをしなければ文句を言われるので、それが自分へのプレッシャーとなって必死で頑張れるようになるという主張ですが、この理屈だと自分の決まった収入をキープするために従業員に給料を遅配したり取引先に支払いを遅らせてもOKってことになります。そんな重要な約束を破っていたらお金持ちになる前に世間の信用を失ってしまうでしょ、常考。

また、「金持ち父さん」は自分の下で働く人間についてこう言います。

「恐怖を感じるから仕事に行く。お金がその恐怖をやわらげてくれることを願いながらね。でもお金が入っても恐怖は消えない。それからまた新たな恐怖に襲われて仕事に戻る。今度もお金が恐怖をやわらげてくれるのではないかと思いながらね。でも今度もそうはならない。恐怖が彼らを罠のなかに閉じ込めているんだ」

うーん、確かに仕事はお金を稼ぐための手段であり、収入を失うことは恐怖だけど、それだけで仕事をしているわけでもないでしょう。新しい価値を生み出すとか、お客さんに楽しんでもらうとか、たいていの人は仕事の中に何らかの喜びを見出しながら働いているわけで。この辺はかなり違和感のあるところです。そもそも、そうした自分の見下している人間を雇って儲けるってのはどうよ、と素朴に思わざるを得ません。

そもそも、本書に限らずお金持ち本の多くに言えることなのですが、著者は本当に金持ちなのか。本当に書いている通りの手法で財産を築いたのか、ということが本書の記述からは見えません。「妻と私がやっている不動産会社は、数百万ドルの値打ちのある不動産を所有している」とか、ものすごくあいまいな書き方しかしない。さらっとマルチ商法に肯定的な話を入れ込むのもこの手の本によく見られる現象であります。おそらく、出版の後のビジネス展開を睨んでのことと思われます。

というわけで、結論としては「読むなら話半分で」といったところでしょうか。金銭教育は必要なんだろうけれど、この本を教科書にしちゃいけません。

金持ち父さん貧乏父さん金持ち父さん貧乏父さん
著者:ロバート キヨサキ
筑摩書房(2000-11-09)
おすすめ度:4.0
販売元:Amazon.co.jp
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