パワハラ、セクハラ、長時間労働、不当解雇… 会社とのトラブルにはどんな対処方法があるか?

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 働いている人が会社でパワハラやセクハラを受けたり、突然給与を引き下げられたり、正当な理由もなく解雇されたり等々、不当な扱いをされたときはどんな手を打てるか――。

 社内の話し合いですぐ解決できれば、それに越したことはありません。大企業であれば相談窓口が設置されているところもあります。しかしそうした仕組みが整備されている会社は限られており、そう簡単に解決とはいかないのが現実でしょう。

 実は冒頭の問いは最近、何件か問い合わせを受けたテーマです。会社と働く個人の間のトラブル解決手段について私も断片的な知識しかなかったので、ちょっと調べてまとめてみました。なお、以下の記述は主に『日本の雇用終了』(労働政策研究・研修機構編)を参考にしています。


◎弁護士に依頼し裁判に訴える

 紛争解決の最終的な手段として思いつくのは弁護士に依頼して交渉し、場合によっては訴訟にすることでしょう。弁護士への労働相談窓口としては以下のようなものがあります。

法テラス 
 問い合わせの内容に応じて解決に役立つ法制度や地方公共団体、弁護士会などの関係機関の相談窓口を案内。経済的に余裕のない人の法的トラブルに対し、無料法律相談や必要に応じて弁護士・司法書士費用などの立替えなども行っている。

日本労働弁護団 ホットライン
 労働者・労働組合の権利擁護を目的とした弁護士団体が実施している電話相談。

「過労死110番」 過労死弁護団全国連絡会議事務局
業務上の過労やストレスが原因で発病した結果、死亡や重度の障害を負った場合について、労災補償の相談を行っている。

 しかし、実際にかかる費用や手間、時間を考えれば、一般の人が弁護士へ依頼するのは困難です。問題は解決したいが裁判にするほど大きなものではない、あるいはその会社で働き続けたいので真正面から会社と対立したくない、という人も多いでしょう。

◎労働組合に相談する

 働く人と企業は労働と報酬による雇用関係で結ばれていますが、両者には交渉力の大きな格差があります。そのまま放置しておけば女工哀史の世界のように、ひどい労働条件がはびこることになります。そこで国家による雇用契約への介入と、労働者の団結による集団的労働条件規制が整備されてきました。

 これによりすべての労働者は労働組合を結成し、団体交渉をし、ストライキを起こせるという労働三権を持っています。すなわち、労働者は何か会社とトラブルが発生したら労働組合を通じて対処するという方法があります。
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 労働政策研究・研修機構が労働組合を対象におこなった調査によると、最近5年間で受け付けたことのある苦情内容としては「残業時間、休日・休暇等に関する不満」「賃金・一時金に関する不満」のほか、「仕事の進め方等の業務遂行上の問題に関する不満」や「職場内人間関係の不満」といった個別的な苦情が受け付けられています。
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 苦情に対する労組の対応としては、労使協議等で取り上げるほか、担当部署への働きかけ等が行われています。
(図表出典:労働政策研究・研修機構 「職場におけるコミュニケーションの状況と苦情・不満の解決に関する調査(労働組合調査)」

 しかし労働組合の推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)は減少の一途をたどり、平成26年は17.5%に過ぎません。労働組合がカバーしている労働者はそれほど多くないのです。とくに中小企業、パートやアルバイトなどはあまりカバーされていませんし、名ばかり管理職に代表される管理的な立場に立つ労働者も増加しています。自分で労働組合を設立するという手もありますが、そのハードルは高い。

 労組のなかにはあまり個人と会社のトラブル解決に積極でなかったり、労使協調路線の傾向が強すぎてあてにできない、という場合もあったりします。いわゆる「御用組合」「名ばかり労働組合」問題です。また、成果主義の導入などで労働条件も全員一律ではなく個別的になる傾向が強まり、労働組合の集団的な対応を難しくしています。

 こうした状況から、会社と個人の労働者の紛争を企業外の労働組合が取り上げて解決に取り組む動きが目立ってきました。こうした企業外組合は「ユニオン」と呼ばれます。

◎ユニオン(企業外組合)に相談する

 労働組合には勤務する企業の社員で組織される企業別組合と、企業にとらわれずに地域、職種などで組織され一人でも加入できるユニオンがあります。日本的経営の「三種の神器」の一つとされたように、日本では企業別組合が一般的ですが、前述したように企業別組合がカバーできない労働者やトラブルが増加するようになり、ユニオンの活動が目立つようになってきました。

 どんな活動をしているかというと、ちょっと長いですが典型的なパターンは次の引用のようなものです。

 労働組合に加入できない中小企業労働者や非正規労働者や管理職労働者が、使用者による解雇・雇止めや労働条件引き下げといった事態に直面し、企業外部に存在する労働組合(ユニオン)に駆け込み、この組合の組合員となる。この組合は、新たに組合員となった労働者の利害を代表して、問題の企業に団体交渉を申し込む。通常、団体交渉とは、労働者の集団的な労働条件を労使トップ間で交渉するものであるが、このようなケースの場合、団体交渉といってもその中身は駆け込んできた個別労働者の労働条件に限られ、実質的には個別交渉である。しかしながら、労働組合法によって労働組合の団体交渉権は守られているので、これを拒否することは不当労働行為となる。
 (出典:『日本の雇用終了』労働政策研究・研修機構編)

 ユニオンは企業内組合が解決できない紛争の受け皿となっているわけです。

◎総合労働相談コーナーや助言・指導、あっせんを利用する

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 (出典:厚生労働省 「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します

 一方、従来の枠組みではカバーできない会社と従業員の紛争を解決する仕組みの構築は国の政策課題にもなり、2001年に個別労働紛争解決促進法が施行されました。これにより都道府県の労働局では紛争の予防と円満で素早い解決を図ることを目的に、「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」「都道府県労働局長による助言・指導」「紛争調整委員会によるあっせん」の解決援助を無料で行っています。

 総合労働相談コーナーは都道府県の労働局や労働基準監督署などに設置され、専門の相談員が労働問題のあらゆる分野に関して労働者、事業主のどちらからの相談も受け付けています。所在地は以下のURLにあります。

 厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内

 総合労働相談コーナーで受け付けた相談のうち、紛争解決の援助対象となるものは「労働局長による助言・指導」「紛争調整委員会によるあっせん」が行われます。

「労働局長による助言・指導」とは都道府県の労働局長が紛争の当事者に対して問題点を指摘し、解決の方向性を示すことで自主的な解決を促進する制度です。したがってこれは話し合いの解決を促すものですが、何らかの措置を強制するものではありません。助言・指導で解決しなかった場合、あっせんへ移行するか、他の紛争解決機関の説明と紹介を受けることになります。

「紛争調整委員会によるあっせん」とは弁護士や大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家で組織された紛争調整委員会が企業と労働者の間に入り調整を行い、話し合いを促進して解決を図る制度です。

 個別労働紛争解決制度の枠組みは上の図の通りで、総合労働相談コーナーの相談件数は約103万件、助言・指導の申出件数は9471件、あっせんの申請件数は5010件。そして助言・指導は1か月以内に97.3%が、あっせんは2か月以内に92.0%が処理されています。

◎労働審判制度を利用する

 労働審判制度は労働審判法により2006年から施行された制度で、裁判官1名と労働関係の知識、経験を持つ労働審判員2名からなる労働審判委員会が地方裁判所で3回以内の期日で審理を行うものです。労働審判委員会はまず調停による解決を試み、調停が成立しないときは紛争解決案を定めた労働審判を下します。

 下された労働審判に対し、双方が異議を申し立てなければ事件は決着し、どちらかが異議を申し立てると訴訟に移行します。費用は民事調停と同様です。

(参考:裁判所 民事調停手続

 少し古い数字ですが、労働審判の運用状況は次のようになっています。

 制度開始から約3年半の労働審判事件の運用状況をみると,審理に要した期間は平均で約2か月半です。調停が成立して事件が終了する場合が多く,労働審判に対する異議申立てがされずに労働審判が確定したものなどと合わせると,全体の約8割の紛争が労働審判の申立てをきっかけとして解決しているものと思われます。
 (出典:裁判所 労働審判制度について

 専門的な知識を持つ労働審判委員と裁判官によって審理が行われ、裁判に比べ結論が出るまでのスピードがはるかに速いのが労働審判の特徴といえます。

 裁判所のウェブサイトによると、労働審判手続きは3回以内の期日で審理が終結されるので早期に的確な主張と立証を行うことが重要で、そのためには必要に応じて法律の専門家である弁護士に相談をすることが望ましいとしています。

◎相談の前に準備せよ
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 (出典:厚生労働省 「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します

 以上に上げた手段のどれを選ぶのかはその人の受けた被害や置かれた状況によって異なるでしょうが、とりあえずとっつきやすいのは総合労働相談コーナーに相談することでしょう。相談件数は7年連続で100万件を超えており、相談するのは決して珍しいことではなくなっています。

 また、いずれの手段を選択するにせよ、どのような不当な扱いを受けたのかについて、きちんとメモや証拠を保存し、整理しておくことが大切です。

 トラブルが始まってから起こった出来事について「いつ、誰が、何をした・何を言った」かを時系列に沿って箇条書きでメモをつくっておくと、相談相手がトラブルの概要について理解しやすくなります。また、聞きたいこと、質問したいことも整理しておくと限られた相談時間を有効に使えます。

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