先日、今春の新社会人と話をする機会があって、「これから社会へ出る人への具体的なアドバイス」みたいなものを求められた。会社や職場はいろいろなので、具体的に役立つアドバイスをするのは難しいのだけれど、もし、自分が働き始めた頃に言われていたら役に立っただろうというようなことをお話しした。
以下の話は入社したのが二六歳の秋からという一般的ではないケースで、勤務先は中小企業にありがちな創業者が絶対的な権力者として君臨する、今でいうブラック企業だったことが前提である。
1.何もできない自分に絶望せず、じっくり向き合う
最初のうちは求められた水準のアウトプットができず、怒鳴られ通しの日々だった。アウトプットどころか電話の取り方一つ知らず、周囲はそれを一々教えてくれるような親切な人々でもなかった。で、同じ時期に入った人は自信を失い、すぐ辞めていったのだが、いまにしてみれば、あの時に会社で求められた仕事なんてやり方を覚えてしまえばまあ、どうということもなかった。何もできない自分に絶望して簡単に辞めたりせず、じっくり向き合って一つひとつできることを増やしていけばよい。
2.経営者の視点から状況を俯瞰して見る
私の働いた会社は待遇も教育もろくなものではなく、商品に関しても問題が多々あった。しかも会社にそれらの問題を改善する気配はなく、日々どよんとした気持ちで過ごしていた。ただ、そうした問題の根幹は結局、人・モノ・カネの経営資源が全然足りないところにあったといまならわかる。要はボスとしてはやりたくてもできない、ということですな。であれば、会社側が状況を改善してくれるのを待ったところでどうにもならない。さっさと自分で限られた資源を有効に使って、自分でできる範囲で現状を改善していくしかない。何か改善に成功すれば転職活動するとき、職務経歴書に実績として書けるし。
3.与えられた環境のなかで機会を見出す
職場環境は劣悪で、人員が足りず待遇も人間関係も悪かったのでどんどん人が入れ替わっていった。でも、少ない人数でたくさんの仕事を回さなければいけない環境は、短期間で技能を身に付けるという意味では恵まれていたとも言える。職業人としての自己の成長に焦点を当てて、その場その場で何を身に付けられるかという考えを持っていれば、自分の意に沿わない職場や環境を与えられたとしても、何か意味のある時間を過ごすことができる。
最初の頃は暗中模索で先が見えず、自分は本当にやっていけるのか、このままここにいていいのか、という気分になることがある。でも、どんな仕事でも自分のできなかったことができるようになり、職場のなかに存在が認められるようになると、俄然仕事は楽しくなりはじめる。基本的にそれまでは簡単に辞めないほうがいいと思う。
ただし、健康や精神を病んでしまうような状況があったら、ダウンする前にさっさと逃げ出したほうがいい。真面目な人ほど限界を超えて頑張ってしまいがちなので、親でも友人でも恋人でもいいのだが、誰か自分を見てくれる存在と定期的にコミュニケーションを取って、異常が生じたら自ずとチェックしてもらえるような関係を築いておくとよいと思う。
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