トヨタがはまった「でぶスモーカー」の罠

UCCがtwitterで宣伝メッセージをユーザーに送りつけた件は、不思議なことにユーザーの怒りはUCCに批判に向かわず、キャンペーンを仕掛けたであろう広告代理店探しに向かいました。(その後、UCCは自社の責任を強調)。

その理由をTech Waveの湯川鶴章氏は次のように指摘しています。

今回UCCが迅速に対応したことで批判の矛先がUCCにそれほど向いていないのも、UCCがユーザーの声に耳を傾けたと多くのユーザーが感じたからではないだろうか。

twitterユーザーの反応を見て二時間でキャンペーンを中止したUCCの対応と、昨年8月のレクサス暴走事故で顕在化したトヨタ車の不具合に対する一連の措置を比較すると、その迅速さの違いは歴然です。もちろんコーヒーのキャンペーンと自動車のリコールでは問題の性質は全く異なりますが、人間の安全性に関わる分、トヨタのほうが顧客の声に耳を傾け、迅速に不安を打ち消す対策を打つ必然性は高かった、と言えます。米国の陰謀論とか米メディアのキャンペーンとかいろいろ言われていますが、それらにつけ込むスキを与えたのも、後手後手にまわったトヨタの対応です。

でも、「火は小さいうちに消し止めろ」なんて、危機管理をちょっとでもかじった人間なら誰だって知っている原則です。まして、リコール隠しで倒産の危機に追い込まれた三菱自動車や、フォードとブリヂストンの泥試合という前例のある自動車業界です。優れた人材の集まったトヨタほどの企業が、製品に不具合が出た場合のシミュレーションをしていないわけがありません。でも結果としてトヨタは、今頃になって自社HPのトップにお詫びを掲載せざるを得ない事態に追い込まれてしまいました。
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なぜ、すべきことがわかっているのに実行できないのか。これを「でぶスモーカー」症候群と言います(『脱「でぶスモーカー」の仕事術』デービット・メイスターより)。太っていたりタバコを吸うのは健康に悪いから、ダイエットと禁煙に取り組まなければいけないとは誰もがわかっている。でも、実際に取り組んで体重を減らし、タバコと縁を切ることのできる人はきわめて限られています。人は将来の利益より、目先の快楽に目がくらんでしまいがちだからです。ただし、心臓発作や脳梗塞でも起こして、本当に危機的な状況に直面した人をのぞいて。

組織もこれと同じで、正しい戦略(=やるべきこと)はわかっていても、それをやるのは苦痛だから、本当に危機的な状況を迎えない限り、実行することは難しい。では心臓発作を起こす前に、やるべきことに取り組むことはできないのでしょうか。前掲書ではその方法をいくつか挙げています。

1 日々の習慣にする
2 スコアカードを公表する
3 リーダーシップの発揮
4 手段より原則を示す
5 自ら進んでやる決意を持つ
6 決意を持たない人はバスから降ろす

これらを眺めるとリコール問題以前、トヨタが称賛されていた要素が多く含まれていることがわかります。「なぜを五回繰り返す」習慣やトヨタ生産方式による「見える化」、歴代経営トップのリーダーシップ、役所や銀行に頼らない気風、自主的なカイゼン活動等々。おそらく、組織のなかのそうした強みが近年はゆるんでいたか、機能しなくなっていたのだと推測されます。

そう考えると今回のリコール問題の根っこは、品質の問題にとどまらず、思った以上に深いのかもしれません。

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