「デザインとイノベーションを、『かけ算』で学ぶ。」に行ってきた

土曜日に東京大学 i.schoolのシンポジウム「デザインとイノベーションを、『かけ算』で学ぶ。」に行ってきました。内容は「デザイン思考に基づくイノベーション教育のパイオニア、フィンランド・Aalto大学IDBMよりPeter McGrory教授を迎えて、イノベーション教育のこれからを議論する」というもの。こういう機会をオープンでやってくれるのはありがたいっすね。

ただ、残念ながら同時通訳頼りの私にはPeter McGrory教授が何言っているかは正直、あんまりわからないまま終了。以下は紺野教授、堀井教授とのパネルディスカッションも含め、虫食い的に理解した上でぼんやりと考えたことに過ぎませんが、せっかくなのでメモっておきます。

イノベーションというと、わりと技術革新という意味とほぼイコールで捉えられがちだけど、テクノロジーだけでできることはだいぶ限られているはわけで。たとえばアップルが出す製品に革新的な印象を受けるのはモノに組み込まれたテクノロジーだけじゃなく、見た目や質感の美しさだったり、ユーザーに与える経験価値の豊穣さだったり、ビジネスモデル全体の組み立てだったりする。

つまり、イノベーションの創出に大きく寄与しているのがデザインである。だから、新しい価値を生み出そうとするのなら、20世紀のようにテクノロジーだけじゃなく、デザイン思考を持つことが重要になる。ただ、ここでいうデザインとは、20世紀の工業社会のそれとはちょっと異なるかもしれない。デザインという言葉が指すのはモノや図案の設計だけじゃなく、「本質的問題解決の知的方法論としてのデザイン」や「経験や印象、関係性を生み出すためのデザイン」(紺野教授のスライドより)という意味になっているわけだ。

しかし、そうしたデザイン思考のアプローチを取ろうとしても、企業の現場では「イノベーションを抑制する重力の法則」が働いており、それを打ち破るには「場」が必要である。これは紺野教授の指摘であったが、じゃあその「場」がどのようなものになるのか。その一つの試みがフィンランド・Aalto大学といえる。(案内によればこの大学は「デザイン、ビジネス、テクノロジーの三位一体でイノベーションにアプローチする、学際的デザイン教育のパイオニア」である)

で、ちょっと面白いなあと思ったのが、シンポジウム終了後のレセプションパーティでした。企業の方と学生の方とそれぞれ数人、お話する機会があったのだけれど、イノベーションについて前者はわりと「新製品開発」というニュアンスで使っており、後者は「何か社会に新しい価値を生むこと」というニュアンスがあった。ただし、前者の話は具体的、後者はあいまいで雲をつかむような感じ。まあ、当然なんだけど。

で、もしかすると企業の人は目先の成果にピントが合いすぎて、イノベーションに必要な「跳ぶ」力が弱っているのかもしれなくて、そこはけっこうな課題ではないかと感じる一方、学生側、教育機関側にとっては、その辺にこうした取り組みの意義を高める余地があると思った次第であります。

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