フォルクスワーゲンが不正なソフトウェアを使って排ガス規制を逃れていた問題は同社やアメリカだけに留まらず、世界にその影響が波及しています。不正が見つかったのと同じ車は全世界で1100万台。発覚当初は留任の意向を示唆していたヴィンターコーン会長は辞任に追い込まれました。
で、同社に関するさまざまなニュースが溢れていますが、最近の業績推移や会社の規模感など基本的な情報がまとまっているものがあまり見当たらない。ということで、簡単なものではありますが図表を作成してみました。
○フォルクスワーゲン社の業績推移
ヴィンターコーン氏がフォルクスワーゲン社長に就任した2007年以降の売上高(Sale revenue)と営業利益(Operating Profit)の推移を眺めてみると、下のグラフのように2014年までの7年間でどちらもおよそ2倍に成長しています。
自動車販売台数(Vehicle sales)も2010年から右肩上がりで増加しています。
○フォルクスワーゲンとトヨタの業績比較
一方、昨年の自動車販売台数世界一位のトヨタと業績を比較してみると、売上高と販売台数は拮抗していますが、営業利益、純利益では大きな差がついています。経営効率の点でフォルクスワーゲンはまだトヨタには及ばないようです。
直近年度業績比較 | ||
VW | トヨタ | |
売上高(億円) | 271,400 | 272,350 |
営業利益(億円) | 17,000 | 27,500 |
純利益(億円) | 14,500 | 21,730 |
販売台数(2014年、万台) | 1,022 | 1,023 |
○フォルクスワーゲンの世界地域別販売
アニュアルレポートに掲載されていた図表を眺めると、成長の原動力となっているのは中国のあるアジア太平洋地域です。本拠のあるヨーロッパでも成長していますが、巨大市場である北アメリカでの実績はパッとせず、南アメリカでは大きく減少しています。
このように見ていくと、ヴィンターコーン氏の社長就任以来、フォルクスワーゲンは貪欲に成長を志向し業績を拡大してきたものの、その内実は不正な手段に手を染めて消費者や行政をあざむくものだった、ということのようです。Think Blueキャンペーンとは何だったのか。
アメリカで課される可能性のある課徴金は2兆円を超えるとされ、支払いには年間の営業利益を吹っ飛ばしてもまだ足りません。さらにこれから始まるであろう集団訴訟や信頼の喪失による売上の低迷、ドイツメーカーの環境戦略の中核にあったクリーンディーゼルの頓挫等々、ダメージは相当なものになりそうで、トヨタに匹敵する売上規模の会社がやらかしたツケはドイツを中心にいろんなところへいろんな形で回されることになるのでしょう。成長を牽引した中国市場も雲行きが怪しくなっていますし、フォルクスワーゲンにとって事態は非常に深刻です。
(データ出所)
フォルクスワーゲンの業績推移:フォルクスワーゲン各年度アニュアルレポート
トヨタとの業績比較における円換算の数値:日経テクノロジー「トヨタを猛追、好業績の独VWが抱く不安」
フォルクスワーゲンの世界地域別販売:フォルクスワーゲンアニュアルレポート2014
コメントを残す