震災で東北地方の人口や雇用はどうなるか?

大規模な災害が起こったあと、その地域の人口や労働市場はどう変化するのだろうか?

阪神大震災直前の1995年1月1日に神戸市の人口は1,520,365 人だった。それが震災後、初めて実施された同年10月1日の国勢調査では1,423,792 人となり、10万人近く減少した。震災前の人口を超えたのは2004年11月の1,520,581人。ほぼ10年で人口は元の水準に回復したわけである。
「神戸市統計報告 特別号」 平成16年11月9日)

koube jinkou

では、東日本大震災後の東北の人口はどうなっていくのか。このテーマを扱った「東日本大震災によって東北3県の人口・労働力市場がどう変わるか」(周燕飛)という論考が労働政策・研修機構のホームページにアップされている。副題にあるように、2005年にハリケーンカトリーナの直撃で大ダメージを受けた米ニューオリンズ市を参考にしながら、東北3県(岩手、宮城、福島)の人口推移を予測している。

このコラムによると、大きな災害を受けたあと一時的に人口は減少するものの、その後大きくリバウンドするケースは少なくない。原爆が投下された広島、長崎が元の人口規模を取り戻したのはそれぞれ1975年、1960年だった。復興を果たした被災地域の共通点は、災害前から経済が成長期道に乗っていたことである。

これに対してハリケーン前から経済が低迷していたニューオリンズ市の人口は、2008年に災害前の74%まで回復したが、2009年には人口の増加が止まった。経済が低迷していた地域では、震災後しばらくは避難先から戻ってくる住人と復興事業で人口が回復するが、それが一段落ついた時点で人口の回復力が弱くなるからである。

一方、多くの企業がダメージを受けたニューオリンズ市では、災害直後の一カ月で雇用者数が22%減り、失業率も5%から15.1%に急増した。ただし雇用規模はその後持ち直し、2007年以降は災害前までの8割程度で推移している。また復興関連の仕事を中心に平均賃金率が上昇し、災害で大量に発生したごみを処理するゴミ処理業者の賃金上昇率は50%以上! 

以上をながめた上で、著者は東北三県ではニューオリンズ市と同様、中長期的に雇用規模は縮小するが人口規模の縮小がそれを上回るため、失業率は震災前より低い水準に落ち着く可能性が高く、復興関連事業の賃金上昇で中間所得階級が維持できると楽観的に予測している。

狙うところは、「Being Smaller, being wealthier」だと筆者は考える。町自体は一回り小さくなるが、そこに住む住民一人ひとりがより豊かになり、より幸せに暮らしているという将来像も素晴らしいものだと思う。


ただし、それには復興関連需要が一巡した後も雇用規模を維持できるかが問題で、「中長期的な雇用創出も念頭に、被災した東北3県への企業誘致を税制面からサポートするべき」と提言している。

私自身としても、津波で水産業が壊滅的な状況にあるうえ、原発問題で広範囲にわたり農業がダメージを受けているため、第1次産業の割合が高い東北地方の復興には、中長期的な雇用創出政策が欠かせないと考える。

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