書評『ソーシャルメディア革命』

ソーシャルメディア革命 (ディスカヴァー携書)ソーシャルメディア革命 (ディスカヴァー携書)
著者:立入 勝義
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
(2011-01-21)
販売元:Amazon.co.jp
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アカウントをつくったまま放置していたFacebookだが、最近に入ってからログインすることが多くなった。私の周りでも活用する人が増え、ウォールを眺めているだけで楽しめるようになったからで、ネットワーク外部性が働くというのはこういうことかと感じている。

で、ソーシャルメディアの現況や将来の洞察をテーマにした何かよい本はないかなと書店で見つくろったなかの一冊が『ソーシャルメディア革命 』(立入勝義)。評価からいうと非常に微妙というか、「もったいないおばけ」が出るというか…。

読後感としては内容にとりとめがなく散漫で、すぐ気が付くような主張の矛盾や瑕疵もいくつか見られる。たとえば「(ソーシャルメディアの)定義なんて、後づけでマーケティングの専門家がやればいいことだ」(P31)と言い放ったあとで「フェイスブック以前の大手(と一応限定しておこう)SNSは本来のSNSではない。ソーシャルメディアとしての要素を十分踏まえているとは言えないのだ」(P202)と言ってみたりする。

こういう簡単な揚げ足取りがいくつかできちゃうあたりや、何かを語る際、すぐ前提に言い訳をおきたがるあたりは萎え萎えである。

では本書に読む価値がまったくないかといえば、決してそんなことはない。四ヶ月で「2時間のブログ執筆で月に3000ドルを稼ぐ」という目標を達成した北米のプロブロガー、ジョン・チャウ氏のインタビュー内容には非常に勇気づけられるし、名を知られたビデオブロガーを採用しソーシャルメディアエバンジェリストに配置しているソニーの取り組みは先進事例として非常に興味深い。

著者はロス在住のブロガーでコミュニティサイト構築などを手がけている人らしい。現地にいることを強みとして、北米の最新情報を発信する点においてはよい仕事をしているが、それらの情報を分析したり洞察したりする部分はあまりうまくいっていない。その原因は十分考えを練らないまま拙速にアウトプットしてしまった、編集者が内容面のサポートをきちんとしていない、といったことではないかなあ。

というわけで、本書はもっともっとよくなる可能性を持っていたのに、ちょっと生煮えのまま出されてしまった残念な一冊といえる。「もったいないおばけ」が出るというのはそういうことで、速報性を重視したのであればシンプルに「北米ソーシャルメディア最新動向レポート」としてまとめたほうがすっきりするし、著者の強みを活かせインパクトもあったように思う。

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