「正社員不足」なのに「正社員が増えていない」のはなぜか

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「パート・アルバイトは増えたが正社員が増えていない」というアベノミクス批判がある一方で、最近は正社員不足や人手不足の話題が目につくようになってきました。なぜ正社員への需要はあるようなのに、正社員は増えていかないのでしょうか。

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 まず、正社員はどの程度不足しているのか確認してみましょう。

 厚生労働省「労働経済動向調査」には「労働者過不足判断D.I.」という指標が出ています。これは労働者が「不足」と回答した事業所の割合から「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いたもので、変化の方向性を示します。数値がプラスなら不足の方向にあります。


雇用形態別労働者過不足判断D.I.の推移(調査産業計)

(出典:厚生労働省 労働経済動向調査の概況

 上の図の通り正社員D.I.は全体で22ポイントの不足超過で、しかも14期連続です。調査時期でいうと平成23年8月からと、けっこう前から正社員の不足超過が続いているわけですね。

 ちなみにパートタイムD.I.は26ポイントの不足超過で、こちらは21期連続です。

 一方の「パート・アルバイトは増えたが正社員が増えていない」という話ですが、その理由としては「少子高齢化に伴う人口構造の変化」が指摘されています。入職する若者が少ない反面、退職していく年齢層の人口が多いため、全体として正社員が増えないというわけです。

 若年期の入職とその後の離職に伴う減少を前提とすると、入職期の人口が相対的に少なく、人口構造が高齢化するもとでは、正規の職員・従業員に新たに就く者の数よりも、退出していく数の方が多くなり、正規の職員・従業員を継続的に減少させる要因となる
 (厚生労働省 労働市分析場レポート 第47号

 ただ、人口構造の変化は大きな要素ではありますが、転職業界の人たちとお話をしていると正社員不足や人手不足の理由はそれだけではないと感じます。要は企業が「このポジションに欲しい」という一定以上の役割を任せられる人材が足りておらず、人材の量だけでなく質の面での不足も目立つからです。

 社内を見ても、社外の労働市場を見ても、マネージャーを任せられるような人材が少ない。

 企業が求める水準の人材を充足することが難しくなっている理由としては、人材の教育・育成を昔ほど企業が力を入れなくなったことが考えられます。そもそも失われた20年の間、従業員のパート化や採用の抑制、少人数化を日本企業は推し進めたため、教育・育成の機会そのものが減少した感があります。

 加えて人件費の抑制や過重労働の広がりはは頑張っても報われない、あるいは頑張っても搾取されるだけという認識を働き手に与えました。出世のインセンティブがかなり弱くなった、ということです。

 人の育成や適切な報酬の支払いを怠ってきたツケがいま、一定以上の役割を担える人材の不足という形で表れているのが現状といえます。これは今後、企業が成長をはかるうえで大きなネックになりそうで、正社員の不足超過はまだまだ続くと思われます。

「正社員」の研究
小倉 一哉
日本経済新聞出版社
2013-06-15


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