マクドナルドの「スマイル0円」が復活というニュースが話題になっています。業績の悪化に歯止めがかからないマクドナルドですが、一世を風靡したスローガンを復活させ、他の施策と合わせて「変化」「新しさ」を印象付けたい意図があるようです。
日本マクドナルド ニュースリリース
新しいマクドナルドが、5月25日(月)から始まります
その新しいマクドナルドというのは日本マクドナルドの創設者、藤田田時代への先祖返りであるなという印象は置くとして、面白いなと思うのが「スマイル0円」というスローガンの威力です。おそらくは日本の大多数の人々が知っていて、会社の顧客に接する姿勢を一言で表すコピー。これを考えた人は偉大です。
いったい誰が考え、どんな風に使われてきたのか。手元にある藤田田(デンと発音して下さい)氏の著書を眺めていたら、「スマイル0円」誕生の経緯は見当たりませんでしたが、「スマイル」に関するエピソードが書かれていました。
『Den Fujitaの商法① 頭の悪い奴は損をする』のなかで藤田氏は「マクドナルドの店員は愛嬌がいい」と褒められるという自慢話をした後で、「じつは、これにも仕掛けがある」と続けます。
マクドナルドの各店のキャッシュ・レジスターの下には、必ず、
「スマイル」
と書いてある。従業員が売上げ金をレジスターに入れたり、釣銭を出すとき、いやでもこの文字が目に入るようになっている。そこで、従業員も自動的に笑顔で「ありがとうございます」というわけだ。
(中略)
笑顔で商売をすれば、必ず客はふえる。好感をもたれるからだ。健全なる肉体に健全なる精神が宿るように、笑顔の店には金が宿る。
(藤田田『Den Fujitaの商法① 頭の悪い奴は損をする』 ワニの新書)
この本は1974年に初版発行された『頭の悪い奴は損をする』に加筆し、1999年に出版された新装版です。マクドナルドの一号店が銀座三越にオープンしたのは1971年ですから、もしこの記述が後に加筆されたものでなければ、草創期から日本マクドナルドはスマイルを強く意識していたことになります。
藤田氏の文章は商売のためのスマイルという合理性が偽悪的に強調されていて、世界一ありがとうを集める云々の偽善的経営者語りとは対照的なのが面白いところです。ただし、その後にはこんなことも書いていて、はからずも現在のマクドナルドが目指すべき内容になっています。
その笑顔は、マクドナルドのハンバーガーに従業員一人一人が絶対の自信を持っているから、ごく自然に出てくる。彼女たちは、こんなに安くてこんなにうまいものを食べなければ損だ、と心から思っているから、優しく笑顔ですすめるのだ。
いつの間にか魅力の薄い商品になってしまったマクドナルドのハンバーガーを店員が自然な笑顔でおすすめできるようにするのはけっこうな難題ですが、果たしてどうなるか。若いころによく利用した身としては、ぜひかつての輝きを取り戻してほしいと思います。
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