昨日、すき家をはじめとする外食チェーンを展開するゼンショーの決算が発表された。売上高が4684億円で前期比12.2%だったものの、営業利益は81億円でマイナス44.8%、売上高営業利益率1.7%というネガティブな結果だった。
従業員の逃散による閉店の影響はどのくらいあったのか。同社の発表によると改装中の店舗も含め、現在は184店で営業が再開できておらず、「15年3月期の売上高は約24億円、営業利益は約8億円それぞれ減少する見込み」としている。
ただし、今期の見通しについては売上高が14.8%増の5379億円、営業利益が95.6%増の159億円と強気の予想である。既存店売上高が5.5%増、新規出店218店の予定がその根拠である。そのなかで主力の「すき家」は既存店7.5%増、出店60店の計画としている(ソースは時事通信の証券会社利用者向け配信記事)。
しかしこの強気の見通しが実現するかどうかは、非常に厳しいと考えられる。ワタミの桑原社長は先日、深刻な人手不足により成長戦略が曲がり角にきていると述べたが、同様の問題にゼンショーも直面するからである。もちろん外食チェーンはどこも人手不足に悩まされるだろうが、ゼンショーはより深刻な影響を受けるだろう。その理由を次の3つである。
1 有効求人倍率のトレンド変化
上の図のように昨年の11月から有効求人倍率は1倍を上回るようになり、従業員の獲得が難しくなっている。しかも労働環境の悪さが知れ渡ったすき家を働く場所として積極的に選択する人は、あまりいないだろう。従業員を獲得できなければ新規出店はおろか、パワーアップ閉店中の店舗の再開も困難である。
2 人件費の上昇
どこも人手不足で従業員の獲得競争が激しくなり時給がアップしている。これは他社も同様だが、加えてゼンショーは労働環境の改善に取り組み始めたところであり、それは店舗の人員配置の増加を意味する。人件費の増大は売上高営業利益率1.7%というゼンショーの業績を圧迫する。
3 ハードワーク
(出典:秒刊SUNDAY)
「ワンオペ」に代表されるように、牛丼チェーンのなかですき家はハードワークであることがよく知られている。タフマンコンテストのような働き方に耐えられるのは体力のある若年層に限られ、中高年層、とりわけ女性には厳しいだろう。
私自身の経験では、吉野家や松屋では中高年の女性が働いているのをよく見かけるが、すき家ではあまり見かけない。これはすき家で働ける人材層が限定されることを意味し、同業他社に比べて従業員獲得のハンデになる。
ゼンショーの小川社長は「日本人はだんだん3K(きつい、きたない、危険)の仕事をやりたがらなくなっている」と嘆いたそうだが、求人倍率のトレンドが転換したいま、そうした職場環境では人は集まらないし、集めるにはよりコストがかかるのは必然である。
もちろんこうした問題は承知であるからこそ、新規出店218店のうち主力のすき家は60店にとどめ、他の業態を160店弱出店する計画なのだろう(前期は全体で189店舗出店し、そのうちすき家の出店は109店舗だった)。
短期間で外食売上日本一に上り詰めたゼンショーは、自ら招いたこととはいえ、この難しい局面でどんな手を打てるだろうか。
コメントを残す