昨日、大手町の日経ホールで「若年層のうつ病~いわゆる『新型うつ病』への対応」というシンポジウムが開催されました。主催はうつ病リワーク推進協議会。専門医や産業医が登壇したこのシンポジウムではそれぞれ興味深いテーマ、内容が展開されました。
そのなかで帝京大学の張賢徳教授が「新型うつ病」についてわかりやすく整理されていたので、覚え書きとして聴講メモを以下にアップしておきます。言葉の再現性に欠けるかもしれませんがなにとぞご容赦を。
◎「新型うつ病」二つの特徴
「新型うつ病」とは学術的に確立された病気ではなく、メディアが最近の若い人に増えているタイプとして取り上げているものである。ただし、そうした症状は精神医学の世界ではずっと以前から存在が指摘されている。
「新型うつ病」の特徴は二つある。一つは他罰性。「上司が悪い」「会社が悪い」と他者に責任を押し付ける傾向である。もう一つの特徴は選択性。選択性とは「会社に行くのは嫌だが遊びには行ける」ということで、この二つの特徴によって周囲からは嫌がられやすい。
しかし、うつ病の診断基準を満たすなら当然治療すべきであるし、本人を責めたところで何の解決にもならない。それより若年層に新型うつ病が発生している理由がわかれば、腹立ちも収まるだろう。
理由として大きいと思われるのは少子化で、昔と違って子供間の争いが少なくなり、親から強く怒られることもなくなった。比較的過保護に育てられた人が会社に入り、いきなり上司や先輩から厳しく怒られると、心理的なベクトルが他罰的な方向に向きやすい。
選択性という特徴は、軽症のレベルで医者にかかることによって発生していると思われる。症状がもっと深刻になっていれば、遊びには行けなくなる。
うつ病は生体エネルギーの低下が本質で、本人は苦しいと感じている。少なくとも初期は受容的に治療を始めるべきである。
◎「見て盗め」ではなく「関わりながら育てる」
日本の若者は自分に対する満足度が低い。その理由としては自己愛に着目している。若い世代は肥大化し過ぎた自己愛を持ち、等身大の自分より大きな自己愛を持っている。それが会社に入ると厳しい上司や先輩がおり、自己愛が傷つきやすい。
一方で自己愛が小さいタイプもいる。わかりやすい例としては虐待を受けた子供で、自分を大切にする気持ちが小さく、うつになりやすい。実は若い人には両方をミックスしたタイプがいる。たとえば子供の頃、親に過保護に育てられていたものの、親の期待に応えないと無視され傷つけられた、というような人。こういう家庭が増えている。
では、どのように向き合えばよいか。昔の体育会系的なやり方や「見て盗め」的なやり方は、もはや成立しない。上司や先輩の側が考え方を変えるべきだ。
重要なのは「関わりながら育てる」という姿勢である。内省を促す。他者への配慮を促す。自信を付けさせる。積極性・自主性を涵養させる。
若い人がけしからんと思うなら、個人のモデルを自分が提示せよ。社会のあり方を考えよ。私自身、自分がそうできるように努力している。
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