BABYMETALが変えたアミューズの海外戦略

 Mステスーパーライブを一年の締めくくりに、BABYMETALの2014年の活動は無事終わりました。武道館2days、欧米ツアー、レディ・ガガのサポートアクトと、10代半ばでこれだけの経験を積んだアーティストはあまりいないのではないのでしょうか。
 
 なかでも、Sonisphere Festivalで6万人の観衆を熱狂させたパフォーマンスは衝撃的でした。よく考えてみればそうそうたるMステ出演者のなかで、BABYMETALほど海外で受け入れられたアーティストはいません。

 来年以降、彼女たちはどんな展開をするのかと所属事務所であるアミューズのウェブサイトをながめてみると、BABYMETALは同社の海外戦略にも大きな影響を与えている様子でした。


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 (画像出典:アミューズ 平成22年3月期 決算説明会資料)

◎成長戦略としてのアジア市場進出

 アミューズは売上高338億円、営業利益36億円の上場企業です。同社の決算説明会資料を時系列で眺めていくと、最初に海外展開への言及がなされているのは2010年3月期です。ここでは「今後の成長戦略」の一つとして「アジア市場への進出」が掲げられ、①日本市場向けコンテンツの開発、②韓国市場向けコンテンツの提供、③中国市場向けコンテンツの開発がその内容として記載されています。

 韓国と中国をターゲットにして始まったアミューズの海外展開はその後、「中国市場」を「台湾市場」に変更し、シンガポール拠点を新たに加え、主に東アジアと東南アジアで進められていきます。

 BABYMETALは2012年にシンガポール、2013年にインドネシアでAnime Festival Asiaに出演しています。こうしてみると、それはアミューズの海外戦略に沿った動きであったことがわかります。

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 (画像出典:アミューズ 平成26年3月期 決算説明会資料)

◎新たに欧米へ進出した理由

 ところが2014年3月期になると「アジア以外も、新市場を開拓すべき拠点を設置」として北米に2拠点を開設する予定をアナウンスし、欧米にも進出することが示されました。はじめてBABYMETALの画像が決算説明会の資料に掲載されたのも、このときからです。

 欧米への海外展開について、アミューズのIR担当執行役員はこう説明しています。

 特にPerfumeやBABYMETALの場合、ソーシャルメディアで人気に火が付いているのが特徴ですね。また、彼女達のYouTube公式チャンネルでコメントや反応を見てみたら、米国や欧州でも人気があるということが見えてきましたので、実際に現地でライブを開催しました。BABYMETALはまさにそんな形で活動範囲が広がっています。
 {出典:equitystory 株式会社アミューズ(証券コード:4301)中編|IR担当者インタビューVOL80

 アジア展開については会社が主導して進めてきましたが、新たに欧米への展開をスタートしたのはソーシャルメディア上でBABYMETALやPerfumeに対する欧米からの反応が大きかったことが判断の根拠になったということです。BABYMETALが欧米への進出をアミューズに促した、といっても過言ではありません。

 で、BABYMETALは欧米ツアーを見事に成功させました。

 アミューズは2014年11月に海外公演をメインにライブ・イベントの企画制作を行う子会社を立ち上げていますが、これは欧米ツアーの成功と無縁ではないでしょう。BABYMETALはアミューズにおいて、はからずも欧米市場開拓の尖兵というべき位置づけになったのだと思います。

◎2015年、BABYMETALのプッシュがはじまる!?

 アミューズの決算短信にまとめられているエンターテイメント市場環境によると、平成25年の音楽ソフト総生産額は2705億円(前年同期比13%減)、有料音楽配信売上は417億円(同23%減)と厳しい環境にあるものの、コンサート市場は2318億円(同36.3%増)と大幅に増加しています。

 要は従来のパッケージや配信による販売が落ち込むのとは対照的に、ライブはどんどん伸びている。これに日本市場の縮小傾向を考え合わせると、「ライブ」「海外市場」がアミューズを含め音楽でビジネスを営む企業にとって成長のカギであり、両者の要素を満たすBABYMETALは今後、ますますプッシュされていくと思われます。

 来年はYUI-METALとMOA-METALが中学校を卒業し、より活動の自由度が増します。今年以上に海外でのBABYMETALの活躍が見られるようになるのでしょう。それはファンにとって非常に喜ばしいことです。

 ただ、彼女たちはまだ高校生の女の子でもあります。あまり会社の期待を過剰に背負わせ過ぎず、楽しく伸び伸びやらせてあげて欲しいというのも、父兄目線からは願わざるを得ません。


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