ワタミの赤字立て直しが困難である理由


ワタミ平成26年3月期
売上高 営業利益  当期純利益
26年3月期(百万円) 163155 294 -4912
25年3月期(百万円) 157765 9259 3540
増減率(%) 3.4 -68.1    ―
売上高営業利益率 自己資本比率
26年3月期(%) 1.8 17.5
25年3月期(%) 5.8 25.4

 昨日、ワタミの2014年3月期決算が発表された。すでに先日、業績予想修正が発表された通り、営業利益は2億9000万円の黒字を確保したものの、特別損失の計上や繰延税金資産の取り崩しで約49億円の純損失となった。前期は7期連続の増収増益だったのに対し、非常に厳しい結果となっている。

 これが一過性の業績悪化で済むのかどうか、検討してみよう。


「各事業セグメントとも計画を下回る厳しい売上状況」

セグメント別売上高・利益
国内外食 介護 宅食 その他
売上高(百万円) 69928 35029 42843 15353
  前期比(%) 94.4 103.9 110.2 137.7
セグメント利益(百万円) -1917 3631 3406 231
  前期比(%)    ― 66.7 114.9 94.3

 ワタミの事業セグメントは3つの主力事業とその他事業に分けられ、3つの主力事業はいずれも労働集約的なビジネスなのが特徴である。

国内外食事業:「和民」「わたみん家」の主力事業のほか「T.G.I. Friday’s」等
介護事業:介護付き有料老人ホーム事業、住宅型有料老人ホーム事業等
宅食事業:日替わり夕食宅配
その他事業:海外外食、農業、環境事業等

 国内外食は主力業態の「和民」「わたみん家」の客数が想定を下回って推移し、既存店売上高前期比93.1%である。居酒屋全体でみても2013年の売上高は前年比95.1%と厳しく、業態として曲がり角にきているように思われる。

(参考:日本フードサービス業界「外食産業市場動向調査」)

 介護事業は新規入居者数が想定を下回って推移し、既存施設の入居率は84.9%にとどまっている。宅食事業は売上高、利益とも成長しているものの競合他社の参入が続き、今回の決算は「各事業セグメントとも計画を下回る厳しい売上状況」にある。

 さらに今後、同社の経営にマイナスの影響を与えると思われる要因が労務リスクからのサービス品質低下、そしてレピュテーションリスクという負のスパイラルである。

主要三事業すべてで死亡事故が発生

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(出典:しんぶん赤旗 「ワタミ居酒屋 最賃と同額時給で募集」)

 決算発表の記者会見で、ワタミの桑原豊社長は今年4月に入社した新卒社員が120人で目標の半分にとどまったことを明らかにした。

桑原社長は「深刻な人手不足という外的環境の変化があった。われわれの成長戦略が曲がり角に来ている」と語った。
(引用:東京新聞「ワタミ労働環境改善へ 新卒採用苦戦 巻き返し狙う

 また、すでに先月、人手不足解消のために運営する居酒屋の1割にあたる60店を閉店し、閉店した店舗の人員を多店舗に振り向けることが発表されており、これが特別損失の計上につながっている。人手不足解消のため地域限定社員を100人雇用する計画も発表されたが、これでは根本的な解決にはならないだろう。

 以前書いたように、もともとワタミは人件費を削って利益を創出する収益モデルの会社である。それは現場の人手不足を招き、従業員の酷使につながっていると思われる。

 (参考:「ワタミ過労自殺事件を引き起こした居酒屋経営の問題点」)

同社の「外部有識者による業務改革検討委員会」の調査報告書では、平成20年4月から平成25年2月の間に労働基準監督官から是正勧告が24件、指導票が17件出されていたほか、経営理念集に「365日24時間死ぬまで働け」との記載があると指摘されている。

そのような労働環境は、主要三事業すべてにおいて死亡事故が発生する背景になっていると考えられる。

「死ぬまで働け」と言われて実際に従業員の死者が出たり、あり得ない従業員の不備から顧客の死亡事故が発生しているのだ。これらの痛ましい事故は現場の過重労働や人手不足と、それによるサービス品質低下の表れといえよう。

「言っていることとやっていることが違う」をどう修正するのか

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 ワタミのグループスローガンは「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」であるが、それとは程遠い現状がある。ワタミ過労自死事件の元同僚の退職者は「言っていることとやっていることが違う」と言ったそうだが、それは「ブラック企業批判」等を通じ一般にもよく知られるようになり、会社の評判や信用を落としている。

 評判の低下を表しているのがワタミ創業者の渡邉美樹氏が理事長を務める郁文館高等学校の生徒応募状況で、普通科は80人の募集に対し応募は39人と定員割れ、郁文館グローバルの国際科は30人の募集に対し33人の応募となっている。

(出典:平成26年度 都内私立高等学校入学応募者状況〔一般入試・中間〕一覧

 また、渡邉氏が参院議員に当選した結果、こうしたワタミの労働環境問題や不祥事が取り上げられることが増え、負の評判が拡散しやすくなっているのは皮肉である。

 特別損失は1回限りで消えるが、人件費を削って利益を創出するモデルに変わる収益構造をつくるのは非常に難しい課題である。そもそも労働集約産業で人を採用できなければ、積極的な事業展開は困難である。

 人が集まらないのは会社の評判が悪化していることも大きいと思われるが、労働環境の改善や会社の信用回復は時間がかかるし、業務改革委員会の調査報告書を読む限りはどこまで本気でやる気があるのか疑問が残る。これについては、またそのうち。

 人手の確保が困難になり、かつての成功モデルが逆回転をはじめたいま、過去のツケが噴出した感のあるワタミの業績立て直しは相当厳しい道のりになると思われる。

(追記:そして半年後、こんな記事を書
きました。
     「ワタミの赤字決算はどのくらい深刻か」 2014.11.12)

5 件のコメント

  • ワタミなんか今時、行く人間はよっぽどの世間知らずしかないな。
    ブラック企業は社会のゴミ同然。

  • 建て直しも何も、和民と聞いただけで客事態が敬遠しちゃうじゃないかい?
    ましてや、ブラック企業を利用して売上に貢献したら・・・悪に加担することになるだろw
    まっ、正直なところ値段の割りに料理も美味くないし客からしたらお得感は0だしな。早よ、店閉店した方がいいかもねww

  • 倒産する前に26歳の若さで過労自〇された遺族に懺悔でもして6億円くらい支払ったら?
    びた一文も慰謝料は払わず、渡邉美樹のスマイル¥0で誤魔化すつもりかよw

  • 株主は配当¥0ミキティのスマイルも¥0でお互い様(爆)ブラック企業で配当金を貰うなんて甘い考えなんだよ(笑)

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