3年後離職率が飲食業平均の3分の1! スターバックスは何が違うのか

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 日経新聞の社説やビジネス誌ですき家の閉店騒ぎが取り上げられるなど、ここにきて人材を酷使する経営への反省と、人手不足が業績の足かせになるとの危機感が強まっている。パート・アルバイトを正社員に転換する企業も増加しているが、人手不足が常態化すればそれだけで人材を確保し、長期間働き続けてもらうことは難しい。

 従業員の定着率が低い外食業界にあって、定着率のよさで知られるのがスターバックスである。ワタミの第三者委員会報告書にワタミ新卒入社者と宿泊・飲食業平均の3年後離職率が掲載されていたので、スターバックスと比較してみると下の表のようになった。なお、スターバックスのデータの出所は『就職四季報 2015年版』で、残念ながらゼンショーのデータは掲載されていなかった。


 3年後離職率はスターバックスの16.1%に対し、ワタミは47.5%、宿泊・飲食業平均は48.5%。ブラック企業批判を受けているワタミは宿泊・飲食業平均とそれほど変わらないが、どちらも入社後3年以内に半数近くが辞めるという水準である。

 一方、スターバックスは宿泊・飲食業平均のおよそ3分の1という低い水準にあり、社員全体の離職率も4.8%である(『就職四季報 2015年版』)。いったい他の飲食業と何が違うのだろうか。

 すぐに思いつくのは「人を尊重する経営」だろう。同社のミッションには次のような一節がある。

Our Partners
情熱をもって仕事をする仲間を私たちは「パートナー」と呼んでいます。
多様性を受け入れることで、一人ひとりが輝き、働きやすい環境を創り出します。
常にお互いに尊敬と威厳をもって接します。
そして、この基準を守っていくことを約束します。
 (スターバックスコーヒー OUR STARBUCKS MISSION

 このミッションに則り、入店したアルバイトは最初の1週間は店に出ず基本理念まで含めた教育を受け、その後も階級別に細かく「ビジネス姿勢」が定められた評価制度によって評価が行われる。評価方法も2次チェック体制が取られるなど、人材の教育・育成には非常に手間ひまがかけられているようだ。

 (参考:an report 市場最前線レポート

 こうした取り組み、要するに人材の教育と育成に費用を投下する方針は、すき家のワンオペ体制とは大きく異なる。とはいえ、先立つ原資がなければいくらミッションでそう言っていても、実際に人材へ費用をかけることはできない。

 そこで前出のワタミとゼンショーと売上高総利益率(粗利益率:売上から売上原価を引いた粗利益を売上高で割って算出)を比較してみると、図表の通りスターバックスの高さが際立っている。売上高総利益率の高さがあるから、スターバックスは人材の育成・教育に費用をかけられる余地がある。

 このように見ていくと単に人を尊重する方針を掲げているだけでなく、それと収益力の強さがリンクしていることが重要なポイントであるとわかる。

 つまり、ミッションに基づき人材育成・教育に費用をかけ、定着率を高くして従業員が生み出す付加価値を増大させ、再び人材育成・教育に費用をかけるという好循環を創出している点が、従業員の酷使に走りがちな多くの外食産業の会社とスターバックスとの違いといえよう。

 いくら従業員の待遇改善や正社員化を進めても、それだけではコストアップにしかならない。従業員にかけた費用を上回るリターンを得られる仕組みを構築できるかどうかが今後、労働集約的なビジネスを展開する企業には問われるようになる。それは企業のミッションの見直しをも含む取り組みになるだろうから、ハードルは非常に高い。

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