神戸物産決算にみる「業務スーパー」の強みと重大な懸念

DSC04568

 本ブログで一番アクセスが多いのは業務スーパーの商品を紹介した記事です。やはり他の食品スーパーとは大きく異なる品揃えや安さ、特異な店づくりが気になっている人が多いのかなと感じます。
 では、業務スーパーはどうやってあの独特のスタイルを構築しているのか。その秘密について今回は業務スーパーの運営会社である神戸物産の直近決算と、他の食品スーパーとの違いから考えてみます。比較対象に使うのは売上規模が近いいなげやと、業界大手のライフです。
 


◎他社と大きく異なる販管費率

神戸物産 いなげや ライフ
売上高(百万円) 228,590 232,081 568,717
売上原価(百万円) 195,431 166,380 412,701
売上原価率(%) 85.5 71.7 72.6
売上総利益(百万円) 33,159 65,701 156,016
売上総利益率(%) 14.5 28.3 27.4
 まず損益計算書の売上原価と売上総利益(粗利)に着目してみましょう。売上原価率とは売上に占める原価の割合で、これが高いと利益を確保しにくくなります。一方、売上総利益率は売上高に占める粗利の割合で、売上原価率と表裏の関係にあります。
 神戸物産は売上原価率が他の2社より10%以上高く、売上総利益率は半分程度になっているのが目を引きます。これだけを見ると、他2社よりも収益力が劣っているようですが、販管費に目を向けると話が違ってきます。

神戸物産 いなげや ライフ
販管費(百万円) 26,358 70,669 161,410
売上高販管費率(%) 11.5 30.5 28.4

販管費率はいなげや、ライフのおよそ3分の1!

神戸物産 いなげや ライフ
営業利益(百万円) 6,801 3,254 10,872
営業利益率(%) 3.0 1.4 1.9
 そして営業利益率はいなげやのほぼ2倍、ライフの1.5倍という結果になっています。

◎既存スーパーと一線を画すビジネスモデル

 このような他のスーパーとの違いはどこから生まれているのか。まず挙げられるのが、業務スーパーは店舗展開をフランチャイズ(FC)方式で行っている点です。業務スーパー713店のうち、直営店舗は2店だけ。神戸物産は業務スーパーのFC本部として商品の企画、開発、調達を行うのが主な業務で、その点では食品スーパーよりコンビニに近い業態といえます。
 店舗運営はFC加盟店が行うわけですから、お店の人件費や地代家賃といった販管費は他の食品スーパーのようにはかからず、販管費率は低い水準を維持できるわけです。
 ただし、加盟店に課されるロイヤリティは仕入れの1%。コンビニのロイヤリティは粗利益の30%~40%程度ですから、両者を比べるとかなり安い設定です。FC展開をしているといっても、神戸物産は加盟店のロイヤルティを収益の柱にする気はないようにみえます。
(参考)
 神戸物産 契約概要・加盟条件
 
 ではどこで収益をあげようとしているかといえば、商品の製造と卸売です。神戸物産は「製販一体」や「六次産業化」を標榜し多くの食品メーカーをM&Aで傘下に収め、連結子会社による食品の製造を行っており、この点ではメーカーとしての性格を持ちます。また、業務スーパーの商品にあまり馴染みのない国からの輸入品が多いのは、利用者ならご存知の通りです。
 弊社は日本最大規模の六次産業化を目指し、2008年より国内自社工場や自社農場のM&Aを積極的に実施してまいりました。その結果、流通業として日本最多の自社工場※(21工場)や、日本最大の自社農業用地(約1,570ha)を所有し、日本で唯一無二の技術で食品の安全・安心を第一に、売上高を拡大しております。
また、「世界の本物を直輸入」をコンセプトとして、世界約50か国の協力工場から他社にはない様々な加工食品を輸入し、その貿易量は日本一の規模となっております。
(業務スーパー トップメッセージ
 
 神戸物産は2013年に居酒屋チェーンや回転寿司などの外食事業を展開するジー・コミュニケーショングループを傘下に収めていますが、これも業務スーパーで構築した食品のサプライチェーンを活かすことに目的があると考えられます。
 つまり、自社の資本ではなくFC展開で出店を拡大してスケールメリットを確保する一方、M&Aで傘下に収めた自社工場や世界の協力工場という独自の仕入れルートを確立することで他の食品スーパーとは差別化した品揃えと低価格を実現している点に、業務スーパーの強みがあります。サプライチェーンがまったく異なるのです。
 付け加えると、販売形態は中小飲食店などの業務用ユーザーを主要ターゲットとしたキャッシュ&キャリー方式(業務卸のように商品を売り掛けで配達せず、ユーザーが店頭で商品を現金で購入し自分で商品を持ち運ぶ方式)で、それに合わせた規格の商品が多い(サイズが大きかったり、ロスの出にくい冷凍食品が多かったりetc)ことも差別化につながっています。

◎ 懸念は低い自己資本比率とインサイダー疑惑
 

 ユーザーから見ると同じ食品を販売するお店でも、他の食品スーパーとは一線を画すビジネスモデルを業務スーパーは築いており、この点で神戸物産の経営は優れています。

神戸物産 いなげや ライフ
自己資本比率 11.1 25.5 53.6
 一方、弱みはないかと眺めていくと、すぐ目に入るのが自己資本比率の低さです。神戸物産の自己資本比率は11.1%と一ケタ目前の水準にあります。業務スーパーという業態が成長段階にあるためガンガン借金してガンガン投資しているためと見ることもできます。
 しかし、よくわからないのが前期は自社株買いを実施していることです。その額、合計で83億円。この自己資本比率の水準なら株主還元より、827億円にのぼる有利子負債の返済にあてたほうがいいのでは、と単純に思うわけです。
koubebussankabuka
 なお、自社株買いは2014年12月と2015年7月に実施され、その前後で株価は大きく上昇しました。とくに2015年7月は3000円台から6000円台へ吹き上がっています。株主様におかれましては万々歳というところでしたが、その後は下落が続き、最近になってこんなニュースが……


 業務用食品を扱う「業務スーパー」を全国にフランチャイズ展開する東証1部上場の「神戸物産」(兵庫県稲美町)株をめぐり、インサイダー取引が行われた疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反容疑で、同社や同社関係者宅を強制調査していたことが8日、証券市場関係者への取材で分かった。不正の疑いがある取引による利益の総額は約50億円に上るといい、立件されればインサイダー取引事件では過去最高額となる。

 まだ神戸物産の経営陣が関わっているかどうかは不明ですが、おかしな動機で経営判断がゆがめられていないだろうなと疑われる状況にはあります。ユニークなビジネスモデルを構築している会社だけに、極めて残念な事件です。
 これが経営に悪影響を与えなければよいのですが、果たしてどうなるか。続報を待ちたいと思います。

 (以下は業務スーパーに関して以前執筆した記事。こちらもぜひご覧ください!)

 業務スーパーではこれを買え! 実食してわかったおすすめ商品20とハズレ商品
 続・業務スーパーではこれを買え! 新たなおすすめ商品20とハズレ商品を追加!

【追記】
 6月6日に神戸物産関係者と取引先の一斉聴取を開始との報道がありました。記事によれば立件を視野に入れた詰めの捜査とのこと。立件の可能性が高まったようです。

 「業務スーパー」神戸物産関係者ら、インサイダー取引で一斉聴取 神戸地検など
 産経新聞


1 個のコメント

  • はじめまして!
    いつも楽しく記事を拝見しております。
    どうもありがとうございます(*´ω`*)
    私はある投資顧問の情報をもとにPCデポ、神戸物産を売買してみましたが、損切りしちゃいました。
    ほかだと、この無料メルマガの情報をもとにhttps://ecash.jp/l/c/8GiEre5N/RXqzMD4R、ロックオンを1日で、30%以上のリターンがとれました。
    すごく勉強になるので、これからも拝見させていただきます!
    よろしくお願い致します。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。