売上がキヤノンの半分以下 住友化学が経団連会長に就任する理由は?

経団連会長に住友化学の米倉弘昌会長が就任することになりました。これは「異例」の人事なんだそうです。

財界総理の異名を持ち、その時々の日本の中心となる産業のリーダーから選ばれるとされる経団連の会長には、新日鉄、トヨタ自動車、キヤノンと一般の人にも聞き覚えのある企業のトップが就任してきました。確かにこれらの会社と比べると、住友化学はあまり聞き慣れない企業名ですし、あまり日本の中心産業という感じでもありません。いったいどんな会社なのか、ちょっと調べてみました。

創業 大正2年 住友総本店の事業として肥料製造所を開設したのが事業のはじまり。
設立 大正14年 株式会社住友肥料製造所として独立。
主な事業内容は基礎化学、石油化学、精密化学、情報電子化学、農業化学、医薬品。

ますますわけわかめになりそうですが、「アフリカで蚊帳を製造・販売し、マラリア予防と雇用の創出で称賛されている会社」といえば、「あの会社か!」と思い出す人がいるかもしれません。世界経済フォーラムでシャロン・ストーンが同社の蚊帳の購入を呼びかけ、あっという間に100万ドルの寄付を集めたエピソードは世界中のマスコミで取り上げられました。

一方、業績はどんなものか。直近の決算を現会長のキヤノンと最有力候補と言われていた東芝と比較してみました。

住友化学      キヤノン       東芝
売上高  1兆7882億円   4兆941億円    6兆6545億円
営業利益   21億円     4960億円     -2501億円

こうしてみると財界総理にしては軽量級の会社、という感じがします。それでもなお米倉氏が就任した理由を考えると、経団連が現在置かれている課題が透けてみえます。

従来、自民党を単独支援してきた経団連は、民主党とは疎遠です。そもそも民主党の支持母体は労働者団体である連合ですから当然ではあるのですが、民主党政権下では嫌でも関係の改善を図らなければなりません。この点、住友化学は労使関係が良好で、有価証券報告書の「労働組合の状況」には次のように書かれています。

<当社の労働組合は、その結成以来、終始よくその統制を保ちつつ今日まで健全に発展し、組合員の経済的地位の向上と企業の発展に寄与してきた。>

この欄はたいてい「問題ない」とそっけなく書かれるのが常ですが、住友化学はこのような好意的な表現をするほど労使関係が良いのだと思われます。

また、御手洗会長時代の経団連はさまざまな失態を犯し、権威が失墜しました。とりわけキヤノンの偽装派遣の実態が明るみに出たことや、ホワイトカラーエグゼプションをめぐる議論は、経団連が社会全体の幸福など考えていないことを世間に印象づけ、信頼を失う原因となりました。

こうした経団連が抱える問題を考えていくと、企業の社会貢献で国際的に評価が高く、良好な労使関係を持つ住友化学のトップを財界総理に据えることは、意外と理にかなった選択かもしれません。

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